エンゲージメントサーベイの結果の分析方法と活用 ── スコアが低いときの対応からアクションプランまで

エンゲージメントサーベイは、実施して結果を出すことがゴールではありません。調査結果を分析して組織の課題と要因を特定し、施策の立案と実行、従業員へのフィードバックにつなげて、初めてエンゲージメント向上や離職率の低下、従業員の定着、労働生産性やパフォーマンスの向上という効果が生まれます。人的資本経営の推進で、エンゲージメントを企業価値に関わる指標として捉える企業も増え、回答結果を的確に読み解く重要性は高まっています。

一方で、調査結果を「出して終わり」にしている企業は少なくありません。自社の調査では、サーベイや面談で「すべて本音で答えている」従業員は 10.8%、結果や改善状況が共有されていると感じる従業員は 25.9% にとどまりました。結果を活用しないサーベイは、回を重ねるほどマンネリ化し、本音が集まらなくなります。

この記事では、エンゲージメントサーベイの結果の分析方法と手順、分析のポイント、スコアが低いときの対応、結果の共有とフィードバックの方法、アクションプランの立て方までを、具体例とともに解説します。

出所:株式会社yellba「組織サーベイ実態・意識調査」(2025年12月/全国の正社員 n=463/インターネット調査)。

エンゲージメントサーベイの結果を活用する目的とメリット

エンゲージメントサーベイの目的は、従業員の満足度や意識を測ることではなく、組織の課題を特定し、エンゲージメントを高める活動につなげることです。結果のデータを活用するメリットは、主に次のとおりです。

  • 組織の課題を客観的に把握できる:経営層や人事の感覚ではなく、データにもとづいて課題を捉え、優先順位を決定できる
  • 離職の可能性を早期に察知できる:エンゲージメントが低下している組織や層を見つけ、離職につながる前に対策を打てる
  • 施策の効果を検証できる:定期的に測定することで、実行した施策が適切だったかを確かめられる
  • 経営と現場の対話のきっかけになる:結果をもとに、経営層・管理職・従業員が同じデータを見て話し合える

ただし、これらのメリットは、結果を分析し、具体的な施策を実行して初めて得られます。

エンゲージメントサーベイの結果を活かせない企業の特徴

スコアの高低だけを見て終わっている

全社のエンゲージメントスコアや設問ごとのスコアを確認しただけで、要因の分析や施策の立案に進まないケースです。スコアは組織の現状を可視化した数値にすぎません。なぜその結果になったのかを多角的な視点で解釈しなければ、問題点も改善のアクションも決まりません。

人事部門だけで結果を抱えている

調査結果の分析と施策の検討を人事部門だけで進めると、経営層や現場の管理職が当事者意識を持てません。エンゲージメントの課題の多くは、職場の上司と部下の関係や業務の進め方など、現場にあります。経営戦略や人材戦略の観点から経営層と現場を巻き込まなければ、施策は実行されず、組織風土の変革にも至りません。

従業員に結果をフィードバックしていない

調査結果を従業員に共有しないと、「回答しても何も変わらない」と受け止められます。自社の調査では、本音を控える理由の1位が「言っても何も変わらないから」(35.0%)でした。フィードバックがないサーベイは、次回の回答の質を下げます。

エンゲージメントサーベイの結果の分析方法

1. 全社スコアと設問ごとのスコアを把握する

まず、組織全体のエンゲージメントスコアと、設問・カテゴリごとのスコアを確認します。理念・ビジョンへの共感、上司との信頼関係、人間関係、評価の公平性と報酬・待遇、労働条件と福利厚生、仕事のやりがいと働きがい、成長機会とキャリア開発、働き方改革に関わるワーク・ライフ・バランス、職場環境と情報共有、ストレスとコンディションなど、どの項目が高く、どの項目が低いのかを把握し、組織の強みと課題の全体像を捉えます。

2. 属性ごとに比較する

部署・役職・年齢・勤続年数・職種などの属性ごとにスコアを比較します。全社の平均値では見えない課題が、特定の部署や階層に集中していることは少なくありません。組織内の差を切り口にすると、改善の対象が明確になります。たとえば、入社3年以内の従業員だけが成長機会のスコアが低い場合、早期離職のリスクが高いと考えられます。

3. 過去の結果と比較し、推移を見る

前回や過去の調査結果と比較し、スコアの推移を時系列で確認します。過去データの蓄積と経年の比較で、実行した施策の効果と目標の達成度合いを検証できます。一度の結果だけで判断せず、変化の傾向を見ることが大切です。そのためにも、調査対象・実施期間・設問をできるだけそろえ、比較の精度を保ちます。

4. 相関関係から要因を分析する

エンゲージメントスコアと各設問のスコアの相関関係を分析し、エンゲージメントに強く影響している要因を特定します。重要度(エンゲージメントとの相関の強さ)とスコアの高低を組み合わせると、改善の優先度を決めやすくなります。

重要度スコア位置づけ対応
高い低い最優先の改善領域原因を深掘りし、施策を優先的に実行する
高い高い組織の強み維持し、他部署にも良好事例を展開する
低い低い中長期の課題状況を注視し、必要に応じて対応する
低い高い現状維持でよい領域過度な投資は避ける

離職率や人事評価、労働時間、業績などの人事データと組み合わせたデータ分析で、エンゲージメントが経営に与える影響も示せます。エンゲージメントサーベイツールを導入すると、データの集計と可視化、個人が特定されない形での属性分析を効率化でき、人事の負担を削減できます。

5. 自由記述の回答を分析する

自由記述の回答からは、スコアの背景にある従業員の意見や不満、要望が分かります。ポジティブな意見とネガティブな意見に分け、頻出するテーマを抽出します。不公平感や業務への意欲、モチベーションの低下、働く環境への具体的な要望など、従業員一人ひとりのニーズや潜在的な問題点が表れます。スコアだけでは分からない具体的な課題の把握に不可欠な分析手法です。

結果を分析するときのポイント

全社・部門・チームと階層ごとに構造化する

結果は、全社→部門→チームと階層ごとに構造化して分析します。全社の課題と、特定の部門やチームの課題を区別することで、全社で取り組む施策と、現場で取り組む施策を整理できます。

低い項目だけでなく、高い項目にも着目する

スコアが低い項目に目が向きがちですが、高い項目は組織の強みです。スコアの高い部署の取り組みを分析し、良好事例として社内で共有することも、エンゲージメント向上に有効です。

「仕事へのエンゲージメント」と「組織へのエンゲージメント」を分ける

仕事への熱意(ワーク・エンゲージメント)と、組織への愛着や貢献意欲(組織コミットメント)は、別の要素です。従業員満足度や幸福度とも区別して捉えます。仕事への熱意は高いのに組織への愛着が低い従業員は、より良い機会があれば離職します。両方を分けて分析することで、必要なアプローチが明確になります。

他社平均との比較に頼りすぎない

他社平均やグローバルのベンチマークとの比較は参考になりますが、業種や規模、設問の違いで単純には比較できません。自社の長期的な変化と、組織内の差を重視します。

誰のエンゲージメントを高めたいのかを決める

全社平均のスコアが上がっても、会社が辞めてほしくない人材のエンゲージメントが低ければ、離職は防げません。期待する人材の状態を目的として定義します。分析の前に、どの層の状態を最も重視するのかを決めておくと、結果の解釈がぶれません。詳しくは「エンゲージメントと離職の関係」で解説しています。

スコアが低いときの対応

スコアが低い項目や部署が見つかったら、すぐに施策を決めるのではなく、まず原因を特定します。同じ「評価への納得感が低い」という結果でも、評価基準そのものに問題があるのか、運用や説明の仕方に問題があるのかで、打つべき施策は変わります。

  • 深掘りの質問を追加する:スコアが低い設問の原因を一段掘る質問を、次回のサーベイやアンケートで聞く
  • ヒアリングや対話の場を設ける:該当部署の従業員や管理職と対話し、数値の背景を確かめる。信頼関係を前提としたコミュニケーションで、より深い情報を収集する
  • 人事制度・業務の見直しを検討する:原因が評価制度や労働条件、業務量にある場合は、制度や業務プロセスの見直し、研修や人材育成・教育の強化など、組織開発の観点で施策を設計する
  • 低位の部署を責めない:スコアが低い部署の管理職を責めると、次回から回答が操作されるなど、調査の信頼性が下がる

質問の深掘りの方法は「エンゲージメントサーベイの質問項目・質問例60選」で紹介しています。

組織診断サーベイ

スコアの低さではなく、原因を特定する

EXギャップファインダーは、入社から退職までの15のプロセスと9つのカテゴリで、従業員がどこでつまずき、何に不満を持っているのかを分析する深層型の組織診断サーベイです。任意の属性軸でスコアを比較でき、改善の優先順位まで明らかにします。

EXギャップファインダーを見る

結果の共有とフィードバックの方法

経営層への報告

経営層には、スコアの一覧ではなく、組織の課題と経営への影響を伝えます。離職率や業績との関係、優先的に取り組むべき課題と施策案をセットで示すと、経営層の理解と協力、施策の意思決定を得やすくなります。

管理職への共有

管理職には、自部署の結果と組織全体との比較を伝えます。結果を評価のために使うのではなく、職場の改善に役立てるためのものであることを明確に伝え、管理職が部下と結果について対話できるよう、資料の提供や研修で支援します。

全従業員へのフィードバック

全従業員には、調査結果の概要と、それを受けて何に取り組むのか、何は対応できないのかを伝えます。結果の共有は、実施から1〜2か月以内など、できるだけタイムリーに行います。良い結果も悪い結果も隠さずに伝え、社内報や説明会で継続的に発信することが、従業員との信頼関係を築き、次回の本音につながります。

匿名性に配慮する

少人数の部署や属性の結果は、回答者が特定されるおそれがあります。一定の人数以下の集団は集計対象から外すなど、匿名性に配慮して結果を共有します。

アクションプランの立て方

分析結果をもとに、改善のアクションプランを立てます。課題ごとに、原因、施策、担当、期限、効果を測る指標を明確にします。

項目内容の例
課題若手社員の成長機会のスコアが低い
原因配属後のOJTの計画がなく、上司との1on1も不定期
施策OJT計画の作成、月1回の1on1の実施
担当各部署の管理職、人事部門
期限次回の調査まで(6か月)
指標成長機会のスコア、若手の離職率

施策は、会社全体で取り組むものと、現場で取り組むものに分けます。現場ごとに施策を立てると、実情に合った改善ができます。人事部門と現場の連携も欠かせません。すべての課題に一度に取り組むのではなく、重要度が高くスコアが低い領域から優先的に実行します。現場の従業員が施策の検討に参加すると、施策の実行力と納得感が高まり、組織の活性化にもつながります。

改善サイクルを継続的に回す

エンゲージメントサーベイの結果は、一度の分析と施策で終わりではありません。実施→分析→共有→施策の実行→再測定のサイクルを継続的に回すことで、組織の状態の変化と施策の効果を検証できます。

調査の頻度は、年1〜2回の詳細なサーベイと、月1回〜四半期ごとのパルスサーベイを組み合わせ、定期的に測定する方法があります。分析のステップと担当を決めておくと、毎回の活用がスムーズです。施策の効果は短期間では表れにくいため、スコアの推移を中長期で見ることが大切です。サーベイが形骸化する理由は「エンゲージメントサーベイが無駄になる5つの理由」で解説しています。

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よくある質問(FAQ)

エンゲージメントサーベイの結果はどう分析すればよいですか?

全社と設問ごとのスコアを把握したうえで、部署や役職などの属性ごとの比較、過去の結果との比較、エンゲージメントと各設問の相関関係の分析、自由記述の分析を行います。重要度が高くスコアが低い領域を、優先的な改善領域とします。

エンゲージメントサーベイのスコアが低い場合、まず何をすべきですか?

すぐに施策を決めるのではなく、原因を特定します。追加の質問やヒアリング、管理職や従業員との対話で数値の背景を確かめ、原因に合った施策を選びます。スコアが低い部署の管理職を責めないことも大切です。

調査結果は従業員に共有すべきですか?

共有すべきです。結果の概要と、それを受けて取り組むこと、対応できないことを伝えます。結果を共有しないと、従業員は回答しても変わらないと感じ、次回から本音が集まらなくなります。

結果の共有はいつまでに行えばよいですか?

実施から1〜2か月以内を目安に、できるだけ早く共有します。時間がたつと、従業員の関心が薄れ、調査の意味が伝わりにくくなります。

アクションプランには何を書けばよいですか?

課題、原因、施策、担当、期限、効果を測る指標を明確にします。全社で取り組む施策と各部署で取り組む施策に分け、重要度が高くスコアが低い領域から優先的に実行します。

他社平均と比べて自社のスコアが低いのは問題ですか?

業種や規模、設問の違いがあるため、他社平均との単純な比較だけで判断するのは避けます。自社の経年の推移と、属性ごとの差を重視して課題を特定します。

結果は「出して終わり」ではなく、改善の出発点

エンゲージメントサーベイの結果は、組織の課題を見つけ、改善につなげるための出発点です。属性ごとの比較や相関関係の分析で課題と要因を特定し、経営層・管理職・従業員に結果をフィードバックし、アクションプランを実行して効果を検証する。このサイクルを続け、改善の仕組みを社内に構築・整備することが、エンゲージメント向上と離職防止、働きがいのある組織の実現につながります。

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