最終更新日:2026年10月31日
心理的安全性の測り方として広く使われているのが、エイミー・エドモンドソン氏の研究で用いられた7つの質問です。チームのメンバーに7段階で回答してもらい、逆転項目を反転させてから平均点を出すことで、チームの心理的安全性を数値で把握できます。
ただし、心理的安全性は測り方を誤ると、実態より高い数字が出てしまう指標でもあります。心理的安全性が低い職場ほど、アンケートにも本音が出にくいからです。この記事では、7つの質問による尺度と点数の出し方、4つの因子で確かめるチェックシートの例、測るときの注意点、結果の読み解き方と活用方法を、全国の正社員463名への自社調査のデータとともに解説します。
出所:株式会社yellba「組織サーベイ実態・意識調査」(2025年12月/全国の正社員 n=463/インターネット調査)。
この記事のポイント
- 心理的安全性の代表的な測り方は、エドモンドソン氏の7つの質問に7段階で回答してもらう方法です。
- 逆転項目(3問)は「8 − 点数」で反転させてから、7問の平均を出してチームごとに集計します。
- 簡易的に振り返るなら、話しやすさ・助け合い・挑戦・新奇歓迎の4つの因子ごとのチェックシートが使えます。
- 心理的安全性が低い職場ほどアンケートにも本音が出にくいため、匿名性の説明と、平均点だけでなく分布や中立回答の多さの確認が欠かせません。
心理的安全性を測る目的
心理的安全性とは、チームの中で率直に意見を言ったり、失敗を報告したりしても、罰や非難を受けないとメンバーが信じられる状態のことです。目に見えにくい状態だからこそ、測定して数値にすることで、次のようなことが分かります。
- チームごとの差:同じ会社でも、部署や上司によって心理的安全性は大きく異なる
- 取り組みの効果:1on1や会議の進め方を変えた前後で、数値がどう変化したか
- 弱い要素:話しやすさ、助け合い、挑戦など、どの要素に課題があるか
感覚で「うちのチームは話しやすいはず」と判断していると、上司と部下の認識のずれに気づけません。測定は、思い込みを確かめ、改善の打ち手を絞り込むための手段です。心理的安全性の定義や高める方法は「心理的安全性とは」で解説しています。
エドモンドソン氏の7つの質問(心理的安全性の尺度)
ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン氏は、1999年の研究論文で、チームの心理的安全性を次の7つの質問で測定しました。現在も、心理的安全性を測る代表的な尺度として使われています。
| No. | 質問の趣旨 | 種類 |
|---|---|---|
| 1 | このチームでミスをすると、責められることが多い | 逆転項目 |
| 2 | このチームでは、問題や難しい課題を指摘し合える | 通常項目 |
| 3 | このチームでは、自分と違うという理由で人を拒むことがある | 逆転項目 |
| 4 | このチームでは、リスクのある行動をとっても安全だ | 通常項目 |
| 5 | このチームでは、他のメンバーに助けを求めにくい | 逆転項目 |
| 6 | このチームには、自分の努力を意図的に損なう人はいない | 通常項目 |
| 7 | このチームでは、自分のスキルや才能が尊重され、活かされている | 通常項目 |
出所:Edmondson, A. (1999) “Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams” をもとに、趣旨を日本語で要約。
回答の方法
各質問に対して、「まったく当てはまらない(1点)」から「とてもよく当てはまる(7点)」までの7段階で回答してもらいます。5段階で実施する企業もありますが、時系列で比べるなら、一度決めた段階数を変えないことが大切です。
点数の出し方
逆転項目(1・3・5)は、点数が高いほど心理的安全性が低いことを示す質問です。集計するときは、7段階なら「8 − 回答の点数」で点数を反転させます。そのうえで、7問の平均点を出したものが、その人から見たチームの心理的安全性のスコアになります。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① 逆転項目を反転する | 質問1・3・5の点数を「8 − 点数」に置き換える |
| ② 7問の平均を出す | 7問の合計を7で割る(1〜7点) |
| ③ チームで集計する | メンバー全員の平均点と、点数のばらつきを確認する |

たとえば、質問1に「6(よく当てはまる)」と答えた場合、反転後の点数は2点です。平均点が高いほど、心理的安全性が高いチームと考えられます。
4つの因子で確かめるチェックシートの例
日本の職場では、心理的安全性を「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」の4つの因子で捉える考え方も広く知られています。石井遼介氏の著書『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター、2020年)で紹介されている考え方です。
次のチェックシートは、4つの因子の状態を職場で手軽に振り返るための例です。メンバーそれぞれが「当てはまる」「どちらともいえない」「当てはまらない」で答えます。
| 因子 | チェック項目の例 |
|---|---|
| 話しやすさ | 悪い報告や、自分のミスを上司にすぐ伝えられる |
| 話しやすさ | 会議で、役職に関係なく反対意見を言える |
| 話しやすさ | 分からないことを、気軽に質問できる |
| 助け合い | 困ったときに、チームの誰かに助けを求められる |
| 助け合い | 問題が起きたとき、犯人探しより解決策の話になる |
| 助け合い | 忙しいメンバーがいると、自然に手を貸す雰囲気がある |
| 挑戦 | 前例のないやり方でも、まず試してみることが認められる |
| 挑戦 | 挑戦した結果の失敗が、評価で責められることはない |
| 挑戦 | 新しい提案をしたとき、まず前向きに検討される |
| 新奇歓迎 | 経歴や考え方の違う人の意見が、価値として受け入れられる |
| 新奇歓迎 | 新しく加わったメンバーの気付きが歓迎される |
| 新奇歓迎 | 自分らしさを隠さずに働ける |
「当てはまらない」が多い因子が、そのチームの課題です。チェックシートは簡易的な振り返りの道具なので、厳密な比較や経年での測定には、質問と回答の段階を固定したアンケートを使います。
心理的安全性を測るときの注意点
心理的安全性が低い職場ほど、本音が出にくい
心理的安全性を測るときの最大の難しさは、測りたいもの自体が回答の正直さに影響することです。発言しても安全だと思えない職場では、アンケートの回答も「誰かに見られるかもしれない」と考えて控えめになります。
yellbaの「組織サーベイ実態・意識調査」(2025年12月、全国の正社員463名)では、サーベイや面談に「すべて本音で答えている」社員は 10.8% にとどまりました。本音を出し切っていない社員は 57.4% に上り、控える理由で最も多かったのは「言っても何も変わらないから」(35.0%)です。数字の高さだけを見て安心するのは危険です。
匿名性と集計のルールを先に伝える
回答者が安心して答えられるよう、実施の前に次の点を説明します。
- 誰が回答を見られるのか(上司は個人の回答を見ない、など)
- 何名以下の集団は集計しないのか(5名未満は表示しない、など)
- 結果を何に使うのか(評価には使わない、チームの改善に使う、など)
平均点だけで判断しない
平均点が同じでも、全員が中くらいの点数をつけたチームと、高い人と低い人に分かれたチームでは、状態がまったく違います。点数の分布や、「どちらともいえない」という中立回答の多さもあわせて確認します。自社調査でも、多くの設問で中立回答が3割強から5割近くを占めました。中立が多いときは、問題がないのではなく、答えにくさが隠れている可能性があります。
「どちらともいえない」の裏にある本音を読み解く
EXギャップファインダーは、会社と社員の間のどこにギャップが生まれているのかを、原因の構造まで特定する診断型の組織診断サーベイです。心理的安全性が低く本音が出にくい職場でも、部署や層ごとの差から、声を上げにくくしている要因を明らかにします。
EXギャップファインダーを見る結果の読み解き方と活用方法
チーム・部署ごとに比べる
心理的安全性は、会社全体より、チーム単位で大きく差が出ます。部署や上司ごとにスコアを並べると、取り組みを優先すべきチームが分かります。ただし、スコアの低いチームの上司を責める材料にすると、次回から正直な回答が集まらなくなります。
上司の自己評価とメンバーの回答を比べる
同じ質問に上司自身にも答えてもらい、メンバーの回答と比べる方法も有効です。上司は「自分のチームは話しやすい」と感じていても、メンバーはそう感じていないことがよくあります。このずれ自体が、改善の出発点になります。
結果を共有し、行動を決める
測ったあとに何も変わらなければ、メンバーは「答えても意味がない」と感じ、心理的安全性はかえって下がります。結果をチームに共有し、どの因子から手を付けるかを話し合い、具体的な行動を決めます。3〜6か月ほど続けてから再度測定し、変化を確かめます。高める方法は「心理的安全性の作り方」で紹介しています。
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よくある質問(FAQ)
心理的安全性はどうやって測りますか?
エドモンドソン氏の研究で使われた7つの質問に、チームのメンバーが7段階で回答する方法が代表的です。逆転項目の点数を反転させてから7問の平均を出し、チームごとに集計します。
心理的安全性の7つの質問とは何ですか?
「ミスをすると責められることが多い」「問題や難しい課題を指摘し合える」「他のメンバーに助けを求めにくい」など、チームの対人関係のリスクについて尋ねる7つの質問です。このうち3問は逆転項目です。
逆転項目の点数はどう計算しますか?
7段階で回答した場合は「8 − 回答の点数」で反転させます。たとえば6と答えた場合は2点になります。5段階の場合は「6 − 回答の点数」です。
心理的安全性のチェックシートはどう使えばよいですか?
話しやすさ・助け合い・挑戦・新奇歓迎の4つの因子ごとに項目を用意し、メンバーに答えてもらいます。「当てはまらない」が多い因子がチームの課題です。簡易的な振り返りに向いており、経年の比較には段階を固定したアンケートを使います。
心理的安全性はどのくらいの頻度で測ればよいですか?
取り組みの効果を確かめるなら、3〜6か月に1回程度が目安です。測るだけで結果を返さないと回答の質が下がるため、共有と行動までを1つのサイクルとして回せる頻度にします。
測定結果が高ければ、心理的安全性は高いといえますか?
そうとは限りません。心理的安全性が低い職場ほど、アンケートにも本音が出にくいからです。点数の分布や中立回答の多さ、上司とメンバーの回答のずれもあわせて確認することが大切です。
測ることは、声を受け止める第一歩
心理的安全性の測定は、点数をつけることが目的ではありません。メンバーが感じている「言いにくさ」を見える形にし、チームで向き合うための出発点です。測った結果に応え、行動が変わったとメンバーが実感できたとき、次の測定には今より少し本音が入るようになります。
