個人の変化は見えた。組織のどこが問題かは、見えなかった
まず、お二方のお立場と、組織を見る役割について教えてください。
O様 いま、フロントのセクション以外の企画部門が大きく二つに分かれていて、営業企画、つまり攻めの企画セクションと、それ以外の守りのセクションがあります。私はそこを管掌していて、その中に人事のエンゲージメントや、事業部付きの人事としての機能も含まれています。
Y様 私は、人の入れ替わりに伴う手続きなど、人事の実務を担当しています。もともとグループ内の別事業で営業をしていて、この4月に移ってきたばかりです。人事を担当するのも、この事業の現場に入るのも初めてでした。
社員の声を集める仕組みは、以前から回されていたそうですね。
O様 2021年ごろから、ずっと月次のパルスサーベイをやっています。毎月、天気のマークで答えるようなもので、仕事と人間関係と、睡眠などの体調に関する設問。大体3問くらいですね。それとは別に、四半期に1回、20問ほどのエンゲージメントサーベイをやっていました。
始めた経緯は、「人的資本経営」という言葉が出始めたころに、社員の生産性を良くしていく文脈で、ちゃんと声を拾っていこうという趣旨だったと聞いています。時期によっては、若手の担当者が専任でついて、かなり力を入れてPDCAを回していたこともありました。
それで見えていたこと、見えていなかったことは何でしたか。
O様 個人が会社に対してどう思っているか、個人のコンディションが今どうかは分かりました。声を出してくれたり兆候を見せてくれれば、その人に対して手を打つことはできたんです。ただ、主語を組織や事業全体にしたときに、どこにどう問題があるのかが見えなかった。
一応、属性でデータを切ることはできるんですよ。新卒か中途か、年代、役職。でも深掘りが難しくて。「この数値、低いっちゃ低いけど、じゃあこれが課題なのかと言われると、なんか違う気もする」という感じで。
提供元に相談されたことはありましたか。
O様 あります。どう捉えたらいいのかよく分からなくて。そのときに言われたのが、「会社として何を課題と認識していて、どの数字を改善しに行くと決めるかは、もう各会社さん次第です」と。以上、みたいな感じで終わっちゃったんですよ。
そうなると、ちょっと活用が難しいなと。組織別の傾向は見られるんですが、何が原因かを考え始めると、細かくは分からない、となっていました。
それでも、その仕組みは続けている。
O様 個人のコンディションの変化が見えるところには、価値を感じています。全体で体制変更があったり、業績が厳しかったりという動きと、個人のモチベーションはある程度連動しているので、全体を動かしたときにメンバーがどう感じているかを測る、一つの物差しにはなっていました。
入社から定着までのプロセスが、初めて見えた
今回のサーベイについて、事前に結果の予想はありましたか。
O様 フラットに見ていました。これまでのものと似た設問項目はもちろんあるけれど、結果の切り取り方が全然違うので、別のものとして見ていました。
実際にご覧になって、これまでのサーベイでは見えなかったものはありましたか。
O様 入社から定着までの、EXのプロセスになっているところ。あそこが、これまでの調査では全く見えなかったんです。だから、あの可視化はすごいなと思いました。
自分の中では、過去の組織の状態と比べて「ここ、ちょっと落ちてるな」という何となくの肌感はあったのですが、それが具体的なデータとして明確になった、という感じですね。
レポートの見え方はいかがでしたか。
Y様 分布とか、ぱっと見でどこに課題があるのかが分かりやすいなという印象でした。
O様 注目すべき数字を強調してもらっていたり、グラフできれいにまとめてもらっていたりするので、いろんな情報の受け取り方をする人が見ても分かりやすそうだな、と思いました。
声の大きい不満に、埋もれていた
結果について予想通りだった部分と、そうでなかった部分を教えてください。
Y様 具体で言うと、ある事業チームの不満が結構上がっていました。それはもともと、他のサーベイの結果や組織の状態を見て予想がついていた部分だったので、「やっぱりここが課題なんだ」と確信に変わったところがあります。
もう一つが、別の部門で、実は離職意向が高いけれど、声は上げていない。サイレント離職につながる可能性があるという話があって。そこは盲点だったな、というのが発見でした。
その部門は、それまで問題として認識されていなかったのでしょうか。
Y様 メンバーに個別に話を聞くと声は出てきてはいるので、なんとなく傾向があるのかなと、ほんのり感じてはいたんです。ただ、先ほどの声が大きいチームのところに埋もれてしまっていました。私の中では、そちらのほうが声も大きく状態も掴みやすかったので、意識がそちらに向いていました。
言葉を選ばずに言うと、ただ愚痴りたい、納得がいかない、という時期もあるじゃないですか。そういう人たちは、「若いから仕方ないか」という感じで見ていたりもするんですけど。声を上げていなくても、辞めたい意向がある人も意外といるんだな、という視点の発見でした。
一番の課題は、離職ではなくパフォーマンスだった
結果は、社内でどう共有されましたか。
O様 データだけは共有してある状態です。役員・部長クラスが7人いて、今回の結果をもとに話をしたいのですが、そこはこれからです。
ただ、そのうちの一人である社長からは、すでに反応がありました。いま会社の大きな課題の一つに、ある部門が上がっているんです。今回の職種別の結果からすると、その部門が会社に対して「無関心」に近い状態になっていた。だから、その組織をどう立て直すかを考えるうえで、今回明らかになった実態は捉えたうえでやったほうがいいと思います、という話をピンポイントでしました。
その部門の課題は、離職ですか、パフォーマンスですか。
O様 組織全体のパフォーマンスです。
打ち手の優先順位が明確になった、とご回答いただいていました。何から手をつけようとお考えですか。
O様 人を動かすときのケアやフォローですね。全部ができるわけではないのですが、現在は結構、個々人の頑張りに頼る状態になってしまっているんですよ。もちろん周囲のメンバーが手伝ってあげるマインドは持っているんですが、余裕がなかったり、フォローするだけのスキルがなかったり、ほどよく伴走できずにやりすぎちゃったり。
そこに「しっかりと介入していきましょう」と部長に伝えるときの、根拠の一つとして使わせてもらいたいと思っています。
いつ頃から動かれる予定でしょうか。
O様 9月に向けて、人が動いたり全体の動きが出てくるので、そのタイミングでやっていく予定です。
「サマリのサマリ」があると、もっと動きやすい
一方で、使いにくかった点も率直に伺えますか。
Y様 情報がたくさんあって、しかも一つひとつが深かったので、これをもとに結論どこを改善しましょう、というのがサマリでもう少し分かると、動き方が取りやすいかなと感じました。
O様 確かに、サマリのサマリみたいなものがあるとさらに動きやすくなるかもしれないですね。一つひとつの結果にコメントは書いてもらっているけれど、頭から隅まで細かく読んでくれる人ばかりではないかもしれないので。
社内に結果を共有する際の難しさはありますか。
O様 そこは私も悩んでいるところです。解説書はもらったんですけど、あれも細かいんですよね。
確かに情報を正確に扱うことは大事なのですが、もらった資料だけを展開しても、多分現場の管理職は好きなように読んでしまうから、多少は私たち運用する側で解釈を入れて展開したほうがいいなとは思いつつ、まだやれていない。工数として、ちょっと重いなという感じはします。
社内共有の下準備を、こちらで支援できるとよさそうですね。
O様 そうですね。大前提として、このサービスはショットで使うものではないと思うので、そこの支援があると継続して活用しやすいなと感じました。
「もう一度、視野を広げよう」というきっかけに
実施前に、細かすぎるのではないかという懸念はありませんでしたか。
O様 ありました。各論に行き過ぎると、一つの施策に飛びつきたくなってしまう。今回は組織全体で見たかったので、そこはどうなんだろうと思っていたんです。でも、自分が想像していたよりも粒度は抽象だったので、そこは大丈夫でした。
同じようにサーベイを回している他社の人事の方に一言お伝えするとしたら、いかがでしょうか。
O様 エンゲージメント向上や離職防止について、的を絞りきれていない会社さんには、すごく合うサービスだと感じました。問題の原因がどこにありそうかを細かく見られるので、いろいろな切り口で見ていった中で、狙いどころの特定がしやすいと思うんです。他のサーベイをやってはいるけど結局どこに手をつけるか絞り切れていないとか、自社で考えていろいろと調査をやっているけれど「本当にここかな」と確信が持てていない会社さんは、やってみると視界が開けるんじゃないかと。
あとは、レポートが出るのがすぐなのがいいですね。こんなに深いのに早い。こういった施策ってホットなうちにやったほうがいいので、その点はすごく良いと思います。
Y様はいかがでしょうか。
Y様 私は人事未経験の状態で、この事業の現場に入るのも初めてというタイミングだったので、課題の特定もできなければ何も知らない、という状態でした。だからこそ、一旦こう、風呂敷を広げると言いますか、全体の現状を詳しく見られたのは、すごくありがたかったです。
逆に、人事を突き詰めている方は——これは半分偏見かもしれないですけど——「おそらくこうだ」と、正解の道筋が立ちすぎている人もいるんじゃないかなと思って。ずっとやってきた施策だし、力を入れてきたから、これが成功していると言いたい、という方もいらっしゃるんじゃないかと。そういうときに、もう1回視野を広げようというきっかけとしても使えるサービスなのかな、と見ていて思いました。